からだの“要”をいたわる―治療中の鼠蹊部ケア、私に効いた小さな工夫

治療を始めてまもなく、歩くたび、座るたびに鼠蹊部がひりつきました。
赤み、皮むけ、汗がしみる感覚。誰にも見えない場所なのに、生活のほとんどの動きと結びついている"要"の部位だからこそ、痛みは一日を支配します。
待合室で、見知らぬ70代の女性に「同じ悩み、ありませんか」と声をかけられたことがあります。
同じ困りごとを抱えている人は確かにいる――。
それを実感したので、私のセルフケアを女性に話しました。
今回は、そのセルフケアをお伝えします。
締めつけない・擦らない・蒸らさない

まず手放したのは、いつものショーツでした。
ゴムの食い込み、縫い目の段差、フィット感を生むための生地の張り。
それらが「守る」より「擦る」に傾く日が、治療中は確かにあります。
私はユニクロのキュロットペチコートに切り替えました。
下着というより"軽い布を一枚まとった"感覚で、股関節まわりに空気の余白が生まれます。
座り姿勢の多い日、移動が続く日、汗ばむ季節。
どの場面でも、まずは"摩擦の発生源を減らすこと"が私の合言葉になりました。
洗い方を"軽く、短く、やさしく"
清潔を保ちたい一心で、つい洗いすぎてしまうのも治療中あるあるです。
私が助けられたのは、アルジタルのハイジーンソープ。
泡立てて手のひらだけでふんわり洗い、ぬるま湯で十分に流す、そしてタオルで押さえるだけ。こすらない、当て布のように水気を移す。
この3つの動作に置き換えたら、ひりつきのピークが少し和らぎました。
汗をかきやすい鼠蹊部には寝具の工夫も
夜になるとホットフラッシュで大量の寝汗をかいてしまい、シーツが不快で眠れない日もありました。
汗腺が多い鼠蹊部には、寝ている間も心遣いが必要です。
そこで取り入れたのが、ニトリの「Nクール」シリーズ。
接触冷感の素材でひんやり感があり、汗を吸っても乾きやすいため、寝苦しさが軽くなりました。
背中や首の後ろからの汗の対策にも有効だと思います。
誰かの体験が、自分の救急箱になる
あの日、待合室で話しかけてくれたご婦人の勇気に、私は今も支えられています。
見えない場所の痛みは、言葉にしない限り誰にも届きません。
締めつけない、擦らない、蒸らさない。
そして"不快な日には、不快を軽減する格好を選ぶ"と決めること。
どれも医療行為ではありません。
けれど、毎日を少し生きやすくするための、小さな工夫です。
それでも不安なときの合図
赤みが広がる、滲む、強い痛みが続く――そんなときは、遠慮なく医療者に相談を。
セルフケアは不調を悪化させないための橋渡しであって、我慢のための口実ではありません。
自分の体をいちばん尊重する選択を、どうかためらわないでください。
"やさしく生活する"選択を
治療の渦中にいると、良くなっていく実感より、目の前のつらさの方が濃く感じられます。
だから私は、不快感の少ないほうへ舵を切る小さな工夫を重ねました。
布を一枚、石けんをひとつ、手の動かし方を少し。
たったそれだけでも、日々の輪郭は変わります。
今日の体に合う方法を、どうか遠慮なく選んでください。
やさしく生き延びることは、立派なケアのかたちです。
※掲載する製品は一般の方向けで、がん患者さんが使用した場合のエビデンスがないことをご了承ください。また、紹介する製品や情報はあくまで一例です。こんなものを探していた、という時の参考になさってください。