タオルでやさしく守るようにーヘパリン類似物質とスキンケア製品の選び方

2025年09月02日

化学治療や放射線治療に伴う副作用として、肌の乾燥や赤み、かゆみなどの"皮膚のゆらぎ"を経験する方は少なくありません。
日常の不快感はもちろん、鏡を見るたびに気持ちまで沈んでしまうこともあるでしょう。
そんな時に医師から処方されることが多いのが「ヘパリン類似物質」です。

ここでは、専門的な医療の説明ではなく、「ヘパリン類似物質とはなにか」「市販で取り入れることはできるのか」という視点から、日常のアピアランスケアに役立つ情報をまとめます。


ヘパリン類似物質とは?

ヘパリン類似物質は、肌の乾燥や硬さを和らげ、うるおいを補うことを目的とした成分です。
保湿性に加えて、肌をやわらげ血流を促す作用が期待され、医療の現場でも長年使われてきました。

処方薬として出されることも多い一方で、近年では化粧品や医薬部外品にも配合されるようになり、ドラッグストアや通販で手に入るようになっています。
つまり「処方だけでなく、身近に選べる保湿成分」でもあるのです。

なぜ医療用に使われてきたのか

ヘパリン類似物質は、もともと「抗血栓薬ヘパリン」と似た構造を基に開発され、皮膚の乾燥や硬化に悩む患者さんの治療を目的に導入されました(※1)。

1954年には製薬会社マルホが「ヒルドイド」を発売し、乳幼児から高齢者まで幅広く処方されてきた歴史があります(※2)。
この長年の臨床実績により、安全性と有効性が積み重なり、医療現場で"乾燥トラブルのスタンダード治療薬"として定着しました。

その後、「処方薬で得られた有用性を日常にも活かしたい」という流れから、医薬部外品や化粧品の領域にも応用が広がりました。
現在ではカルテHD(マルホ)やヘパトリート(ゼトック)といった市販のスキンケアブランドにも採用され、身近に選べる保湿成分へと位置づけが変化しています。

参考文献
(※1)PMDA「医薬品添付文書」:ヘパリン類似物質の効能・効果記載より
(※2)マルホ株式会社公式サイト:「ヒルドイド」製品情報・歴史


市販で出会えるヘパリン類似物質配合アイテム

治療中や治療後の肌はとてもデリケート。
シンプルで安心感のあるアイテムを選ぶことが、ケアを続ける第一歩になります。
ここでは筆者自身も使ったことのある2つのブランドをご紹介します。

カルテHD(マルホ)ー製薬と化粧品の知見を融合させたブランド

乾燥ケアのためのシリーズはピンクが目印
乾燥ケアのためのシリーズはピンクが目印

カルテHDは、皮膚科領域に強みを持つマルホと、化粧品開発で長い歴史を持つコーセーが共同で立ち上げたスキンケアブランドです。
製薬会社が培った"保湿成分の確かなエビデンス"と、化粧品メーカーならではの心地よいテクスチャー設計が融合しているのが特徴。

ブランドの核となる成分は「ヘパリン類似物質HD®」。
乾燥で乱れがちな角層ラメラ構造をうるおいで整え、肌が水分を抱え込める状態へ導くことを目指しています。
さらに、肌荒れを防ぐグリチルリチン酸ジカリウムや、保湿環境を支えるうるおいバリアCPX®も配合。

こちらは乾燥・テカリ・毛穴の気になる肌のためのバランスケアシリーズ
こちらは乾燥・テカリ・毛穴の気になる肌のためのバランスケアシリーズ

化粧水・乳液・クリームのほか、全身に使えるスプレーミストも展開しており、日常的な乾燥対策から本格的なケアまで幅広く応えてくれます。
使い心地はしっとり感がありながらベタつきにくく、季節を問わず続けやすいシリーズです。

ヘパトリートーシンプルで安心感のある薬用保湿シリーズ

2025年9月にリニューアルスタート
2025年9月にリニューアルスタート

一方のヘパトリートは、ゼトックが展開する医薬部外品スキンケア。
主役は「ヘパリン類似物質」で、うるおいを与えながらバリア機能を支え、肌荒れを防ぐことを目的としています。
さらにグリチルリチン酸ジカリウムを抗炎症成分として配合し、乾燥や刺激で敏感になりがちな肌にやさしく寄り添います。

特徴的なのは、シンプルで低刺激にこだわった処方設計。
香料・着色料・アルコール・パラベンを使わず、敏感肌の人でも手に取りやすい安心感があります。
オールインワンジェルやバーム、ハンドクリームなど幅広いアイテム展開も魅力で、ライフスタイルや肌状態に合わせて選べるのも嬉しい特徴。

既存品よりも軽く伸び、スッとなじむテクスチャーに
既存品よりも軽く伸び、スッとなじむテクスチャーに

そして、2025年9月には約5年ぶりとなるリニューアルがスタートします。
従来の"シンプルで安心"という軸はそのままに、3種のセラミド(NG・NP・AP)や3種のアミノ酸(ヒスチジン、グリシン、グルタミン酸)を新たに配合。
さらにテクスチャーも軽やかに進化し、毎日のケアを心地よい時間に誘ってくれます。


「乾燥を防ぐ」という機能だけでなく、スキンケアをすること自体が気持ちを整える時間になります。
治療中は"肌に触れるのが怖い"と感じる瞬間もあるかもしれません。
けれど、無理のない範囲でやさしく保湿をすることが、自分の心を支えるきっかけになります。

市販のヘパリン類似物質配合アイテムは、病院処方の代替ではなく、「日常を少し快適にする選択肢」。
自分に合うかどうかは実際に肌で確かめながら、ゆるやかに取り入れてみてください。

巻末付録:商品情報一覧

カルテHD(マルホ)

※ヘパリン類似物質(保湿)配合のデイリーケア

  • 高保湿化粧水[医薬部外品]
    容量:150mL/価格:1,980円(税込)
  • 高保湿乳液[医薬部外品]
    容量:120mL/価格:1,980円(税込)
  • 高保湿クリーム[医薬部外品]
    容量:40g/価格:2,530円(税込)
  • フェイス&ボディローション[医薬部外品]
    容量:410mL/価格:2,530円(税込)
  • 高保湿ハンドクリーム[医薬部外品]
    容量:50g/価格:990円(税込)

ヘパトリート(ゼトック)

※順次リニューアル中(医薬部外品)

  • 薬用保湿化粧水
    容量:385mL/価格:1,980円(税込)
  • 薬用ミルククリーム
    容量:275g/価格:1,980円(税込)
  • 薬用オールインワンジェル
    容量:280mL/価格:1,980円(税込)
  • 薬用ハンドクリーム
    容量:60g/価格:980円(税込)
  • 薬用バーム
    容量:20g/価格:オープン価格

※ 価格・容量は編集時点の情報です。最新情報は各公式サイトをご確認ください。


※掲載する製品は一般の方向けで、がん患者さんが使用した場合のエビデンスがないことをご了承ください。また、紹介する製品や情報はあくまで一例です。こんなものを探していた、という時の参考になさってください。